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愛犬がささみしか食べないと、「栄養が偏ってしまうのでは?」「このままで大丈夫なのかな?」と心配になりますよね。
しかし、鶏のささみとは、実は犬にとって非常に優れた食材なのです。
良質なたんぱく質が豊富で低カロリーなため、肥満防止につながるなど、たくさんのメリットがあります。
ただ、食べ過ぎによる下痢のリスクや、毎日与える際の適量といった注意点もたしかに存在します。
この記事では、犬がささみしか食べないというお悩みを持つ飼い主さんに向けて、ささみの栄養価に関するメリットから、おすすめの与え方まで詳しく解説していきます。
ポイント
- ささみが持つ栄養価と犬へのメリット
- ささみを食べ過ぎた場合の具体的なリスク
- 健康を維持するための1日の適切なささみの量
- 愛犬が飽きずに食べてくれるおすすめの与え方
犬がささみしか食べない!その栄養とメリット
そもそも鶏のささみとは?

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私たちが普段スーパーなどで目にする鶏の「ささみ」とは、鶏の胸肉の内側にある「小胸筋(しょうきょうきん)」または「深胸筋(しんきょうきん)」と呼ばれる部位のことです。
鳥が翼をたくましく動かすための筋肉であり、その形状が笹の葉に似ていることから「ささみ」という名前が付きました。
鶏肉の部位の中でも特に脂肪が少なく、あっさりとした味わいが特徴です。
犬にとっても消化しやすく、その独特の風味とプリっとした食感を好む子が多いようです。
そのため、ドッグフードの原材料やおやつの定番として広く利用されています。
豆知識:ささみと胸肉の違い
ささみは胸肉の一部ですが、一般的な「胸肉」が胸の外側にある大きな筋肉(大胸筋)を指すのに対し、ささみはその内側にある小さな筋肉です。
胸肉に比べてさらに脂肪分が少なく、より高たんぱく質なのが特徴とされています。
食欲が落ちている時や、いつものフードに飽きてしまった時でも、ささみをトッピングするだけで喜んで食べてくれることも少なくありません。
このように、ささみは犬にとって非常に嗜好性が高く、食事の楽しみを広げてくれる食材と言えるでしょう。
愛犬に与えるささみのメリット
ささみは、ただ美味しいだけでなく、愛犬の健康維持に役立つさまざまなメリットを持っています。
低カロリーで高たんぱくという特徴はよく知られていますが、それ以外にも見逃せない効果が期待できます。
主なメリットを挙げると、筋肉の維持や美しい被毛の形成に欠かせない良質なたんぱく質を効率よく摂取できる点です。さ
らに、体重管理が必要な愛犬にとって理想的な食材であり、エネルギー代謝を助けるビタミン類も含まれています。
ここでは、ささみがもたらす具体的な健康効果について見ていきましょう。
ささみが持つ主なメリット
- 良質なたんぱく質で健康な体づくりをサポート
- 低カロリー・低脂質で体重管理に最適
- 疲労回復を助けるアミノ酸やビタミンが豊富
- 抗酸化作用で免疫力の維持に貢献
これらのメリットを理解することで、「ささみしか食べない」という状況が、必ずしもネガティブなことばかりではないと分かるはずです。
むしろ、ささみの優れた栄養価を活かし、愛犬の健康をサポートするチャンスと捉えることもできるでしょう。
筋肉の維持に必須のたんぱく質

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ささみが持つ最大のメリットは、良質な「たんぱく質」が非常に豊富であることです。
たんぱく質は、犬の体を構成する上で最も重要な栄養素の一つであり、筋肉や骨、皮膚、被毛、さらには内臓や血液など、体のあらゆる部分を作る材料となります。
特に、犬は人間よりも多くのたんぱく質を必要とすると言われており、不足すると筋肉量の低下や免疫力の低下、皮膚トラブルなどを引き起こす可能性があります。
ささみは、他の肉類と比較してもたんぱく質の含有率が高いことが特徴です。
| 食材 | たんぱく質 |
|---|---|
| 鶏ささみ(生) | 約24.6g |
| 豚肩ロース(赤肉・生) | 約19.7g |
| 牛肩ロース(和牛・赤肉・生) | 約16.5g |
(参照:文部科学省「日本食品標準成分表2023年版(八訂)」)
このように、ささみは効率的にたんぱく質を摂取できる優れた食材です。
また、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸をバランス良く含んでいるため、筋肉の疲労回復にも役立ちます。
毎日の食事にささみを取り入れることで、愛犬が活動的に過ごすための丈夫な体づくりを力強くサポートしてくれるでしょう。
低カロリーで肥満防止にも最適
ささみは、「高たんぱく」であると同時に「低カロリー」「低脂質」である点も、犬にとって大きなメリットです。
肥満は、関節への負担、心臓病や糖尿病など、さまざまな病気のリスクを高める要因となります。
そのため、日々のカロリーコントロールは愛犬の健康寿命を延ばす上で非常に重要です。
文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、鶏ささみ(生)100gあたりのカロリーは約105kcal、脂質は約1.0gとされています。
(※記事データベースの情報では約98kcal、脂質約0.8gというデータもありますが、いずれにせよ非常にヘルシーな食材です。)
これは、脂身の多い他の部位と比較して格段に低い数値であり、体重が気になる愛犬にも安心して与えることができます。
ささみには、脂質や糖質の代謝を促すビタミンの一種「ナイアシン」も豊富に含まれています。
摂取した栄養を効率よくエネルギーに変換する手助けをしてくれるので、ダイエット中の愛犬の強い味方になってくれますよ。
おやつとして与える場合も、高カロリーな市販のビスケットなどと置き換えることで、無理なくカロリーオフが可能です。
「ささみしか食べない」という食の好みを逆手にとって、健康的な体重管理に役立ててみてはいかがでしょうか。
犬がささみしか食べない時の注意点と与え方

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知っておきたいささみの注意点
ささみは犬にとって多くのメリットがある素晴らしい食材ですが、与え方によっては健康を損なう可能性もゼロではありません。
「ささみしか食べない」からといって、無条件に好きなだけ与えて良いわけではないのです。
愛犬の健康を守るために、飼い主さんが知っておくべきいくつかの重要な注意点があります。
まず最も大切なのは、調理方法です。
生のまま与えることは絶対に避けなければなりません。
また、人間用の食事を作る感覚で味付けをしてしまうのもNGです。
さらに、どんなに健康に良い食材でも、そればかり食べ続けることによる栄養の偏りや、特定の成分の過剰摂取には注意が必要です。
ここでは、ささみを与える際に最低限守るべきルールを確認していきましょう。
ささみを与える際の4つの基本ルール
- 生では絶対に与えない:必ず中心部までしっかり加熱してください。
- 味付けはしない:塩や香辛料は犬にとって有害になることがあります。
- 与えすぎに注意する:特定の栄養素の過剰摂取は病気のリスクを高めます。
- アレルギーの可能性を考慮する:初めて与える際は少量から試しましょう。
これらの注意点をしっかりと守ることが、ささみのメリットを最大限に引き出し、安全に食事を楽しんでもらうための鍵となります。
ささみを食べ過ぎるリスクとは

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ささみの食べ過ぎで特に注意したいのが、「リン」の過剰摂取です。
リンは骨や歯を形成するために不可欠なミネラルですが、カルシウムとのバランスが非常に重要になります。
ささみなどの肉類にはリンが多く含まれる一方、カルシウムはあまり含まれていません。
そのため、ささみばかりを大量に食べ続けていると、血液中のリン濃度が高くなり、体はバランスを取ろうとして骨からカルシウムを溶かし出してしまいます。
これが長期間続くと、骨がもろくなるなどの健康問題を引き起こす可能性があります。
さらに、過剰なリンは腎臓に大きな負担をかけます。
健康な犬であれば余分なリンは尿として排出されますが、腎臓の機能が低下しているシニア犬や、もともと腎臓に疾患がある犬の場合、リンの排泄がうまくいかず、腎臓病を悪化させる原因となりかねません。
ポイント
リンの過剰摂取は、尿路結石の一種である「リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石」のリスクを高める可能性も指摘されています。
特に水分摂取量が少ない犬は注意が必要です。
これらの理由から、ささみはあくまで主食である総合栄養食のドッグフードを補う「おやつ」や「トッピング」として位置づけ、与えすぎないように管理することが大切です。
ささみが原因で下痢になることも
愛犬にささみを与えた後に下痢をしてしまう場合、主に2つの原因が考えられます。
一つは「生のささみを与えてしまったことによる食中毒」、もう一つは「鶏肉に対するアレルギー」です。
生のささみによる食中毒
生の鶏肉には、カンピロバクターやサルモネラ菌といった食中毒の原因菌が付着している可能性が高いです。
これらの菌は犬にとっても有害で、感染すると下痢や嘔吐、腹痛といった症状を引き起こします。
特にカンピロバクターは少量の菌でも発症することがあり、加熱が不十分な場合でもリスクが残ります。
ささみを愛犬に与える際は、必ず中心部の色が白く変わるまで、しっかりと火を通すことを徹底してください。
鶏肉アレルギー
犬の食物アレルギーの原因として、鶏肉は比較的多いアレルゲンの一つです。
今まで問題がなくても、ある日突然発症することもあります。
ささみを食べた後に以下のような症状が見られた場合は、アレルギーを疑う必要があります。
- 下痢や軟便、嘔吐
- 皮膚をかゆがる、体をこすりつける
- 口や目の周り、耳、足先などが赤くなる
- フケが増える
初めてささみを与える際は、ごく少量から始め、食後に変わった様子がないかを注意深く観察しましょう。
もしアレルギーが疑われる症状が出た場合は、すぐに与えるのをやめ、動物病院を受診してください。
守るべき1日のささみの適量

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ささみをおやつやトッピングとして与える場合、その量は1日に必要な総摂取カロリーの10%程度に抑えるのが理想的です。
これは、おやつでカロリーを摂りすぎて主食が食べられなくなり、栄養バランスが崩れるのを防ぐための目安です。
犬の体重別に、1日あたりのささみの給与量の目安を以下の表にまとめました。
ただし、これはあくまで避妊・去勢済みの成犬が、適度な運動をしている場合の一般的な目安です。
年齢や運動量、体質によって必要なカロリーは異なるため、愛犬の様子を見ながら調整してあげてください。
| 犬のサイズ(体重) | ささみの最大重量(茹で) |
|---|---|
| 超小型犬(約3kg) | 約25g(小さめのささみ約1/2本) |
| 小型犬(約5kg) | 約35g(大きめのささみ約1/2本) |
| 中型犬(約10kg) | 約60g(小さめのささみ約1本) |
| 大型犬(約30kg) | 約100g(小さめのささみ約2本) |
主食のフードを減らすのを忘れずに!
ささみを与える際は、そのカロリー分、必ず主食のドッグフードの量を減らしてください。
いつもの食事にプラスする形で与え続けると、カロリーオーバーで肥満の原因になってしまいます。
愛犬の健康を守るためには、この「適量」を守ることが非常に重要です。
可愛い愛犬にねだられるとつい多くあげたくなりますが、そこはぐっとこらえて、適切な量を心がけましょう。
ささみを毎日与えても大丈夫?
結論から言うと、前述の「適量」をきちんと守り、栄養バランスの取れた総合栄養食を主食として与えていれば、ささみを毎日与えること自体に問題はありません。
ささみは犬にとってメリットの多い優れた食材であり、毎日のおやつの時間を楽しみにしている子も多いでしょう。
その楽しみを無理に取り上げる必要はないのです。
ただし、最も重要なのは「ささみは主食ではない」という認識を飼い主さんがしっかりと持つことです。
ささみだけでは、犬が生きていくために必要なビタミンやミネラル、炭水化物などをすべて補うことはできません。
栄養が偏れば、長期的にはさまざまな健康問題を引き起こす原因となります。
ポイント
「犬がささみしか食べない」という状況でも、主食であるドッグフードに茹でたささみを細かくほぐして混ぜ込んだり、風味付けに茹で汁をかけたりするなど、工夫次第で総合栄養食を一緒に食べてもらうことは可能です。
毎日のご褒美や食事のアクセントとして、上手にささみを取り入れていきましょう。
もし、どうしてもドッグフードを全く受け付けず、ささみだけで過ごしてしまうような状況が続く場合は、他に何か病気が隠れている可能性も考えられます。
一度、かかりつけの獣医師に相談してみることをお勧めします。
(参照:ますだ動物クリニック)
おすすめの与え方を試してみよう
犬がささみしか食べない場合でも、調理法に変化をつけることで、他の食材への興味を引き出したり、飽きさせずに楽しんでもらったりすることができます。
ここでは、安全で簡単な、おすすめの与え方をご紹介します。
基本は「茹でる」または「蒸す」
最も手軽で基本的な調理法は、ささみを茹でるか蒸す方法です。
この方法なら、中まで確実に火を通すことができ、食中毒のリスクを最小限に抑えられます。
茹でる際は、沸騰したお湯にささみを入れて1分ほど加熱した後、火を止めて余熱で数分置くと、パサつかずにしっとりと仕上がります。
細かくほぐしてフードに混ぜたり、おやつとしてそのまま与えたりするのに最適です。
自宅で簡単「ささみジャーキー」
少し手間をかければ、無添加で安全な自家製ジャーキーも作れます。
筋を取ったささみを薄くスライスし、170℃程度のオーブンで20分ほど焼くだけで、カリカリの美味しいおやつが完成します。
噛み応えがあるので、愛犬の満足度も高いでしょう。
シニア犬や子犬には「ペースト状」で
噛む力や飲み込む力が弱いシニア犬や、まだ消化器官が未熟な子犬には、茹でたささみをミキサーにかけるなどしてペースト状にしてあげるのがおすすめです。
フードに絡めやすくなるだけでなく、消化の負担も軽減できます。
万能!茹で汁の活用法
ささみを茹でた後の「茹で汁」は、捨てずにぜひ活用してください。
ささみの旨味と栄養が溶け出したこのスープは、犬にとって最高の風味付けになります。
食欲がない時にドッグフードにかけたり、水分補給として飲ませてあげたりするのに役立ちます。
製氷皿で凍らせておけば、いつでも手軽に使えて便利ですよ。
このように調理法を工夫することで、ささみをより安全に、そして楽しく食事に取り入れることができます。
愛犬の年齢や好みに合わせて、ぜひ色々な与え方を試してみてください。
犬がささみしか食べない悩みを解決
この記事では、犬がささみしか食べないという飼い主さんの不安を解消するため、ささみの栄養価から正しい与え方までを解説しました。
最後に、記事の重要なポイントをリストで振り返ってみましょう。
まとめ
- ささみは鶏の胸の内側にある筋肉で低脂肪・高たんぱくな部位
- 良質なたんぱく質が豊富で愛犬の筋肉や被毛の健康を維持する
- 低カロリーなため肥満防止や体重管理に非常に適している
- 疲労回復を助けるビタミンB群やアミノ酸も含まれる
- 抗酸化作用を持つセレンというミネラルが免疫維持をサポートする
- 与える際は食中毒防止のため必ず中心までしっかり加熱する
- 生の鶏肉に含まれるカンピロバクター菌などには特に注意が必要
- 塩や香辛料など人間用の味付けは犬の健康を害するため絶対にしない
- 食べ過ぎはリンの過剰摂取につながり腎臓に負担をかけるリスクがある
- 鶏肉に対するアレルギーの可能性も念頭に置く必要がある
- 初めて与える際はアレルギー症状が出ないか少量で様子を見る
- ささみは主食ではなくおやつやトッピングとして与えるのが基本
- 1日に与える適量は総摂取カロリーの10%以内が目安
- 茹でたり蒸したりする調理法が最も安全で手軽
- 茹で汁は風味付けや水分補給に活用できる便利なアイテム
- ささみは注意点を守れば愛犬の健康を促す素晴らしい食材である
愛犬がささみしか食べない日々は、飼い主さんにとって大きな不安の種かもしれません。
しかし、この記事でお伝えしたように、ささみは高たんぱく・低カロリーで、愛犬の健康な体づくりを力強くサポートする素晴らしい食材です。
最も重要なのは、加熱を徹底し、リンの過剰摂取を防ぐために必ず適量を守るという基本を忘れないこと。
茹で汁を活用したり、調理法を少し変えたりする工夫一つで、食事の時間はもっと楽しく、安全なものに変わります。
この知識を活かし、「ささみ好き」という愛犬の個性を尊重しながら、毎日の健康管理に自信を持って役立てていきましょう。
